
エスビック株式会社訪問~ブロックカタログ編
群馬県はコンクリートブロック生産で日本全国一位を誇るのだそうです。
エスビック株式会社さんはその群馬県高崎市に本社を構える、ブロックメーカーのトップ企業であります。このたび、エスビック本社の敷地内にある「ブロック博物館」におじゃましてまいりました。その際伺った、ソフト面(というのか?)についてのお話です。
創立昭和27年のエスビックさんは(当初は新日本ブロック研究所)、創業者のお名前・栁澤さんの頭文字から「Y」デザインの透かしブロックを作ったと伺いました。
昭和30年代のことだそうです。なんというか非常に感動しました。
Y字の透かしブロックはまあまあいろんなところで見たことはあるけれど、そういう由来を聞くと一気に歴史が息づいてきて、ブロックが人の血の通ったものに見えてきます。
お話を伺った経営企画室長さんも、家の近くとか思わぬところにYブロックを見つけると「ああ、これはうちの・・・」と思ったりするとおっしゃっていました。
↑これは以前に高崎市で撮ったものである。おひざ元なので間違いなくエスビック社製だろう。めっちゃワイワイしている。
透かしブロックのデザインは誰が考えるのですか?と伺ったところ、エスビックさんでは「開発部」の方々がする(というかしていた)んですが、現在ではもう透かしブロックは作っておらず(!)、今後新作は残念ながらもう出ないんだそうです(!!)。
これを聞いて大変なショックを受けました。もう涙を禁じえません(T_T)。非常に残念です。
現在ではいろんな色や質感やデザインの新しいオシャレなブロックがどんどん新作として販売され、昔ながらのシンプルなスタンダードブロックはもはや全く主流じゃないんですね。そうですか…
そこで「昔の透かしブロックのカタログを見せていただくことは可能でしょうか?」というお願いをしてみたところ、わざわざ事務所の方から探して持ってきて、見せて下さいました。
その一部ですがこんなかんじです。もう当然ですが初めて目にするもので「へええー」ってかんじで業界というかお仕事の現場ではこうなんだっていうのが覗けて感動ものですが、意外にカタログに載っている透かしブロックの種類は少なかった。
あと透かしブロックの名前を、私たちはこれまで勝手につけ(たりつけなかったりし)て呼んでいたが、ここで初めて正式名称を見ることができて、それも感動したのであった。
これは「日の出」か!ひし形でなくて「ダイヤ」なのか!アメリカからデザインが来たから英語の呼び名Sunriseとか Diamondとかを翻訳したのかな?
「Y」はもちろんYでわかるけど、「丸」「輪スカシ」「マスメスカシ」とは・・・「丸」って、「三つ穴」じゃん。(うちらの言葉では…)とか。
てか、ここでは決して多くはない数の透かしブロックサンプルの中に、なぜ「マスメスカシ」とかめちゃマイナーなのが登場してるの?とかちょっといろいろとまどい、狼狽したところもありました。
また「ホーロー」という名の、枠だけの透かしブロックがカタログにあって(2枚目の写真)、ホーローって琺瑯?「枠だけ」のをホーローと言うの?なんで?と疑問に思い、すこーし調べたところ穴あきブロックをホローブロックと言うようで、英語のhollow「空洞」だとわかりました。
昔はホーローと言っていたらしいです。いやーこれまで発見したすべての透かしブロックのそれぞれの正式名称を知ることができたらなあ。ぜひ知りたいもんです。
透かしブロックのデザインには著作権はないそうです。まあYなんかは創業者の名前が由来じゃなくても考えつきそうだし。
青海波もひし形もそのほかのも、微妙に違うバリエーションがものすごくいっぱいありますが、とにかく著作権はないそうです。
ちなみにこちらが一方的に「青海波」とよんでいたものは「みやま」ということがわかりました。
三山、三つ山ということなんでしょう。「せいがいは」と言ったら室長さんに「ん?」てちょっと怪訝な顔をされました。すいませんでした勝手に名付けて。
とにかくブロック業界ではあれのことを「青海波」とは呼んでいないらしいことがわかりました。
透かしブロックに関しては、実は訪問の最大の目的というか希望は「透かしブロックを作っている現場を見たい」ということだったのですが、残念ながらこのたびその目的はかないませんでした。
ようするにエスビックさんではもう透かしブロック製造をしていないからです。しかし室長さんは、近隣の同業社さんに数件電話をかけて、「ウチでは作っていないけど○○さんのところでは『ヒノデ』を日によっては作っているそうです」と教えて下さったり、まことに丁寧に対応して下さいました。
もう本当に感謝しております。
ちなみに室長さんは、何年か前になにかのテレビ番組の企画で「透かしブロックの目的はなんでしょう?」というクイズの答え「通気性を良くするため」を言う役で、テレビに出たことがあるそうです。
驚いたことにブロック博物館を「ホームページで見た」と言って仕事関係でなく趣味で訪ねてきた人は今までになく、今回の我々が初めてだったそうです。
そう聞くと逆にそのようなプロフェッショナルの場所にこんなシロートが行っちゃってよかったのかとちょっと恐縮しましたが。
知らなかったことがいろいろ知れたり、貴重な資料に感動したりで、訪問できて本当によかったです。
ちなみにこちらが透かしブロックに関してこれだけ本気だということをわかっていただくため、昨年8月に制作した写真集を持っていってお目に掛けたところ、室長さんが「これはぜひ・・・資料として博物館に・・・」とお世辞なのかもしれませんが言われたので、願ったりかなったり!と、大喜びで写真集を置いてまいりました。
ひょっとしてありがた迷惑だったかもわかりませんが。でも確かに、こちらが「ぜひ置いて下さい!」と言う前に室長さんのほうが先にそうおっしゃったもんですから。
↑写真集「ブロック塀をさがして」ブロック塀研究会 編
↑Y。これは中野区にて採取したもの。
↑エスビックからの帰り道に見つけたひし形@高崎市
エスビック株式会社さんこのたびは本当にお世話になりました。かさねがさね、ありがとうございました。